人生100年時代の年金制度 No.37

HAPPYらいふ37辻畑憲男撮影

わが国には現在、5つの社会保険の制度があります。
病気やけがに備える健康保険、失業等への所得保障としての雇用保険、仕事中のリスクを保障する労災保険、高齢者の介護の備えとしての介護保険、そして老後、障害、死亡のリスクを保障する年金保険です。

昨年は、この年金保険の5年に1度の財政検証の年でした。昨年の検証によると、現在の年金給付水準は、現役世代の所得代替率が61.7%であることが示されました。5年前の水準は62.7%でしたので、若干低下しました。

所得代替率とは、現在の平均夫婦世帯の年金額2万円を、現在の現役男性の手取り収入(貸与も含めた年収の12分の1)で割った数住です。

今後、少子高化が進む我が国においては、現役世代の負担が過重にならないよう、保険料水準には上限が設けられ、年金給付は財源の範囲内で行われることになっています。保険料収入が減少し、年金受給者が増えていく社会では、給付水準は当然低下し、所得代替率は下がっていくことは避けられないでしょう。

でも、今回の財政検証では、この所得代替率の低下を抑えるための以下の提案もなされています。

  • 厚生年金の適用の拡大と、加入をお歳まで延長
  • 基礎年金の保険科支払いをの歳まで延長
  • 受給開始時期の選択を考歳まで延長などです。

今後の経済成長や労働参加がどのように進むのかによっても違いますが、やはり長く就労することが、自分の老後にも年金制度にもプラスになることは間違いなさそうです。

日本の年全制度は、高齢になった親を個別に扶参する私的扶養に代えて、保険料を払うことによって社会全体で親世代を扶養する社会的扶養の役目も果たしています。

“人生100年時代の年金制度 No.37” の続きを読む

3月で夫が定年し本格的な年金生活に入ります。もし夫が亡くなったら十分な生活費があるか心配です。

3月で夫が定年し本格的な年金生活に入ります。もし夫が亡くなったら十分な生活費があるか心配です。夫に先立たれた後、もらえる年金はどうなるのでしょうか?

56歳女性で専業主婦、夫は今年3月で65歳になり定年退職予定。夫の老齢厚生年金は月10万円、ロウレオ基礎年金は月6.7万円。妻の老齢基礎年金は5万円。<家族>夫64歳、子供2人は独立している。

妻が年金を受取る年齢になるまでは

ご相談者が65歳前に夫がお亡くなりになった場合、夫が受給している老齢厚生年金の3/4である「遺族厚生年金」7.5万円と、中高齢寡婦加算として約4.9万円、合計月額約12.4万円を受給できます。

妻が65歳以降は

ご自身の老齢基礎年金約5万円と遺族厚生年金7.5万円の合計約12.5万円を受給できます。

今後について

まずは、夫が定年退職しますと、60歳まではご自身の年金保険料を支払う必要がありますので、お住まいの市区町村で手続きをしましょう。

その際、付加保険料を追加しましょう。付加保険料を国民年金保険料の上乗せとして納付することで、65歳から受給できる年金額を増やすことができます。付加保険料は月額400円なので、56歳から60歳までの4年間(19200円)の付加保険料を納めると、65歳から受取ることができる付加年金額は、200円×48月(4年)=9600円になります。つまり付加保険料を納めた分は、2年間でモトが取れるのです。

そして、夫にもしもの事があった場合に、どれぐらい生活費が必要なのかを試算しましょう。それによってご自身の年金と遺族年金の合計額で生活できるのか?どれぐらい不足するのかを計算してみましょう。日々の生活費に加え、病気や介護に備える費用として200万~300万円を計算に入れる必要もあります。

いずれにしても、夫が定年退職した後の生活設計が大切ですので、ご夫婦でリタイア後について話し合うことをお勧めします。

公的年金の繰上げ支給と繰下げ支給、どうしますか?

公的年金は65歳支給が原則ですが、60歳から減額して受け取る繰上げ支給や、70歳まで受給せず増額して受け取る繰下げ支給という制度があります。

繰上げ支給のしくみは・・・・

60歳以降の65歳までの間で、繰り上げた月数に応じて1か月あたり0.5%年金が減額されます。 60歳で受給を開始すると30% (0.5×60月)減額され、減額された年金は一生変わりません。損益分岐点は76歳、77歳以上長生きすると損になります。

・繰下げ支給のしくみは・・・

受給開始を66歳以降にすると、繰下げた月数に応じて1か月あたり0.7%年金が増加します。70歳まで受給しないと、42%(0.7×60月)増額することになります。損益分岐点は。81歳、82歳以上長生きすると65歳から受給した場合に比べて得になります。

・メリット・デメリットは・・・

繰上げ支給のメリットは年金が早くもらえることですが、注意点は、一度請求すると取り消しが効かないこと、年金額を増やすための「国民年金の任意加入」ができないこと、老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに繰上げなければならないことです。

繰下げ支給のメリットは、繰下げた期間に応じて年金額が増えること、老齢基礎年金・老齢厚生年金をそれぞれ別々に繰下げられることですが、注意点は、繰下げ中は年金がもらえないことです。

では受給の実態は・・・

2016年の場合、繰上げ支給を選択している人は9.2%、本来の65歳からが88.2%、繰下げ支給が2.7%でした。

人生100年の話題から繰下げ支給が注目されていますが、年金額が増額することにより、社会保険料や後期高齢者医療保険の窓口負担(1割~3割)や公的介護保険の自己負担額(1割~3割)が増える可能性もあり注意が必要です。

消費税10%と軽減税率 n.36

消費税10%と軽減税率イメージ

10月から消費税が上がる予定ですが、前回、2014年に5%から8%に上がった時には消費が冷え込み、GDP成長率が大幅なマイナスになりました。そこで、今回、国は景気対策を予定しています。その一つが「軽減税率の導入」です。

軽減税率とは、食料品などの「生活に最低限必要なもの」を対象に消費税を軽減することです。日本では、今回、食料品や飲み物全般(酒類や外食を除く)や定期発行される新聞に限り8%に据え置かれます。

つまり、スーパーやコンビニなどのイートインスペースでの飲食は10%、持ち帰りは8%になります。では、「持ち帰ると言って中で食べたら?」

その場合は、「購入時に、そのイートインスペースで飲食する意思があるかどうかを顧客に確認します」。もし、飲食する意思があれば税率10%、持ち帰る意思があれば税率8%です。あくまでも、購入時点の顧客の意思で判断するので、後で気が変わったとしても、原則、税率は変更されません。

“消費税10%と軽減税率 n.36” の続きを読む

消費増税に対する新たな住宅取得支援策が始まります!

住宅支援イメージ

消費税増税を控え、住宅購入を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

国にとって住宅取得は内需の柱であり、税率引き上げによる駆け込み需要とその後の反動減が生じた場合、経済に与える影響はかなり大きいと思われます。そこで、消費税率の引き上げ後の住宅購入についてもメリットが出るよう、政府は新たな4つの住宅取得支援策を講じることを予定しています。

住宅ローン減税の間間を10年から13年へ延長。

そもそもこれまでの住宅ローン減税は、年末のローン残高の1%を所得税や住民税から10年間控除(還付)する制度です。

一般住宅では最大400万円、長期優良住宅などは最大500万円が税金から控除されます。今回の支援策は、それを3年間延長しようというものです。但し、10年目まではこれまでと同じ計算方法ですが、10年〜13年は以下のいずれか小さい額となります。

借入金年末残高{上限4000万円(※5000万円)}の1%

建物購入価格{上限4000万円(*5000万円)}の2/3%(2%÷3年)

※の金額は長期優良住宅などの場合

適用要件は、消費税率10%が適用される住宅の取得等をして、平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に入居した場合が対象(中古住宅で消費税が掛からない場合はこれまで通り最大200万円)となります。

住まい給付金の拡充

さらに先の要件を満たせば、住宅取得をした人がもらえる住まい給付金も拡充されます。具体的には、所得階層がこれまで年収510万円以下だったものが、775万円までになり、給付額も最大30万円から50万円に増えることになります。

住宅取得贈与の贈与額の増額

直系尊属(父母、祖父母)からの住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税枠が、良質住宅(エネルギー性・耐震性・バリアフリー性の高い住宅)では1200万円から3000万円へ、それ以外の住宅については700万円から2500万円に拡充されます。

“消費増税に対する新たな住宅取得支援策が始まります!” の続きを読む

健康増進と保険

最近、「健康で長生き」の願望にマッチした新しい価値観の保険商品が各保険会社から発売されています。

これまでの生命保険は、加入時の健康状態で保険料が決定されるものが大半でした。しかし「健康増進型保険」は、健康的な生活をすると保険料が安くなるなどのメリットがある保険です。

リスクをカバーするのではなく、加入者がリスク自体を減らすために、毎日健康に気をつかった食事をしたり、定期的に運動をするなど健康的な活動を促す保険です。保険料は、加入者の生活習慣や日々の健康活動に応じて変動するという点が特徴です。

では、どんな商品があるのか見ていきましょう。

【健康増進型保険の例】

・健康状態を把握し、改善活動を行うとポイントが貯まり、翌年の保険料が安くなったり、特典が得られる生命保険。

・「歩くこと」による健康維持、健康増進に着目し、1日平均8000歩以上歩くと、半年ごとの達成状況に応じて、2年後に所定の健康増進還付金がもらえる医療保険。

・契約後、所定の期間内に健康状態などが改善された場合、保険料が安くなるとともに、それまで上乗せしていた保険料の差額が戻ってくる生命保険。

・契約時から健康年齢にもとづき保険料が決まる保険。健康状態が保険料に反映される。たとえば、実年齢40歳、健康年齢が35歳だと、実年齢マイナス5歳(35歳)の保険料になる。以後3年ごとの更新時の保険料も健康年齢が若くなるほど、保険料が安くなる。

自分の健康を維持することで保険料が安くなるので、健康に気を遣う心が芽生え、健康的な生活を送るきっかけになる保険として評価できます。ただ、その内容や仕組みは保険会社によって異なりますので、保障内容をよく確認することが必要です。

水災補償

昨年は、九州から東海地方にかけて記録的な豪雨が襲い、各地で土砂崩れや河川の氾濫などが相次ぎ、大きな被害が出ました。このような水害に遭った時に役に立つ補償が、火災保険の「水災補償」です。

水災補償は外して契約することもできるため、建物が高台にある、近くに河川等がない、マンションの高層階など水災リスクが低いという理由や保険料を下げるために付保しない契約も多く見られます。

水災補償は、台風、暴風雨、豪雨等による洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石等の水災によって保険の対象が損害を受けた場合、その損害の状況が

  1. 床上浸水、地盤面から45cmを超える浸水を被っ た結果、保険の対象に損害が生じた場合(地下が ある場合は、地下の地盤面から45km)
  2. 保険の対象の再取得価額に30%以上の損害が生じた場合

のいずれかで保険金が支払われます。つまり、水災の基本補償には浸水条件があるのです。

但し、保険料は高めですが前述の浸水条件のない「実損払い」で契約すると、保険金額を上限に実際の損害額が支払われます。又逆に、損害の程度に応じて保険金額の一定率で保険金が支払われる「縮小支払型」にしたり、免責金額を多めに設定することで保険料を低く抑えることができます。

ここ数年の自然災害の頻度やその大きさは、今までの常識では考えられない事態を招いています。これまでなかったから今後もないという保証はどこにもありません。

万一の時に備えるために、補償内容の確認をお願い致します。

家族信託

今年7月に発表された日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳で、いずれも過去最高を更新しました。男性は世界4位、女性は世界2位です。

一方、世界保健機関(WHO)が今年5月に発表した日本人の健康寿命は男女平均74.9歳です。こちらは世界1位で、世界平均が63.1歳ですからかなり優秀であると言えます。

しかし、世界寿命と健康寿命に差があるということは、亡くなるまでの約6年〜10年は自立した日常生活が送れないかもしれない、その可能性が高いことを示しています。

2015年に厚生労働省が発表した推計によれば、2012年で約462万人の認知症患者が2025年には700万人に達し、65歳以上の実に5人に1人が認知症という世の中になると言われています。そのような社会の中では、これからは相続対策よりも、もっと大変なことが起こってくることが予想されます。

家族信託のメリット・デメリット

後見制度に代わる柔軟な財産管理ができる

成年後見制度は、本人の判断能力が衰えるまでは財産管理ができませんが、家族信託は元気なうちから管理を任せることができます。

遺言の代わりとしての効力を持っている

遺言の作成方法に従う必要はなく、自分の死後に発生した相続についても、財産の継承者を指定できます。

二次相続が指定できます

遺言書で指定できるのは一次相続の方法のみですが、家族信託では二次相続の方法まで指定できます。次々世代までの継承者も指定できますので、お子さんがいない場合の相続対策等にも有効です。

障害のある子に財産を残す場合も有効です。

自分で財産管理できないお子さんがいる場合、遺産で安心して生活できるように信頼のできる家族・親族に託すことができます。

倒産隔離機能があります。

将来、自分や受託者が信託財産に関係のない部分で多額の債務を負ってしまった場合でも、信託財産は差し押さえられないという機能があります。

ただしデメリットもあります。

  • 身上監護に関して、成年後見人でなければできない部分があります。
  • 信頼できる家族がいない場合は活用できません
  • 受託者を誰にするかで揉める可能性があります
  • 受益者は、財産を自由にしよう・処分できないにも関わらず、財産を取得したものとして課税されます。

10年前とはいえ、法改正から歴史が浅いため、活用ジレは少なく、金融機関の実務も遅れています。専門家のアドバイスを受けながら進めることが大切です。

又、家族が受託者になるので、資産の管理・運用が外から見えないという問題もあり、相続人全員の理解も必要になってきます。

まずは、家族でしっかり話し合いをして、この制度を活用するかどうかを決めることが大切です。